高校生の頃からくるりが好きだった。関東出身のわたしが、数ある大学の中からわざわざ関西の大学を選んだのも、くるりの出身校だったからというのが理由のひとつだった。彼らの音楽は自分の思い出と深くリンクしていて、「ああ、この曲は何歳のとき、何をしていたときによく聴いてたな」というように当時の情景を思い出せる、そんな存在だ。
2004年にリリースされた「アンテナ」は、わたしが高校を卒業した数日後にリリースされた作品で、中学高校と通い続けたタワーレコードで購入した。地元を離れる前に買った最後の一枚となった。引っ越しを手伝ってくれた母親が帰ってしまって、真新しいCDプレーヤーで「アンテナ」を延々と聴いた。今でも聴くと、この日のこと、一人暮らしのはじまりを思い出す。
2005年、好きだった人に誘われてフジロックに行った。彼もくるりが好きだった。快晴の苗場で、初めてくるりを見た。岸田くんは二日酔いだった。夕日がかってきた中、一番最後に「東京」をやってくれた。涙が出そうで、それを止めるのに必死だった。そんなわたしを見て、彼は「良かったね」と笑っていた。
めぐりめぐって一昨年、桜が散って新緑萌える季節。ひとりでお昼ごはんに出て、何を食べようかなぁと悩んでいたときに一通のメールが届いた。開いてみると、とあるお仕事のお誘いで、居ても立っても居られずにその場でジャンプしたことを覚えている。
縁あってくるりの公式サイトをお手伝いさせていただくことになり、公開されたときは生まれて初めて「夢がかなった」と思った。過去から一気に線がつながった瞬間だった。この仕事に携われたこと、学校の行き帰りにMDウォークマンでいつもくるりを聴いていた、高校生のわたしが知ったらどう思うだろうか。
くるりは今、結成20周年に向けて、今までリリースしたアルバムの再現ライブを行っている。この春行われているのが5枚目のアルバム「アンテナ」である。先日京都公演を観に行ってきて、一曲目の「グッドモーニング」が流れた瞬間は思わず涙が出た。大学生になって一気にいろんなことを見て知って、突として大人になっていった自分のことを思い出した。
同じ頃にリリースされた「ジョゼと虎と魚たち」のサウンドトラックからも何曲か演奏していて、懐かしくなって家に帰ってからひさしぶりにジョゼを観た。
初めて観た高校生のときは「どうして2人は一緒になれないんだろう」と思ったけれど、大人になった今はその理由を容易に想像できてしまうことが、少しだけ悲しい。