―――「好きな人や物が多過ぎて 見放されてしまいそうだ」

椎名林檎は昔、そう歌っていた。

自分の「好き」の対象を見ていると、胃の上のあたりが燃えるように熱くなって、ああすごい、と漠然と思う。
人にすぐ言いたくなるような「好き」もあるし、誰にも話したことのない「好き」もたくさんある。忘れてしまった「好き」も、あえて距離を置いておきたい「好き」もある。

先日実家に帰った時に、友人の住所を調べようと久しぶりに卒業アルバムを開いた。アルバムには卒業生ひとりひとりのコメントが掲載されていて、「楽しかった、ありがとー!」「みんなのことは忘れないよ」という、同級生たちの文章を読んで懐かしんでいた。

自分はどんなコメントを残したのかすっかり忘れていたのだけれど、18才のわたしは

「好き」という気持ちは何よりも強いものだと思う。

と言っていた。

あの頃は今よりも「好き」の対象が遠くて、どうしたらいいのか考えも術もなく、のた打ち回っているだけだった。でも大人になった今は、あの頃死ぬほど憧れていたものと結びつく瞬間がある。夢ってこういうことなのかも知れないと思う。

あの熱を帯びる感覚に、今も変わりはない。